colony
2020年制作
布(ポリエステル)、糸(ナイロン)
350×95×80(cm)
私の制作は素材を見つけ、実験するところから始まっていく。
今回は水のように光る布を見つけ、なんとか形にしたいと考えていた。
しかし、素材が決まったあとに最終的な形状を決めることがなかなか出来なかった。
意味が完全に後付になってしまうからである。
何らかの”かたち”を作るに当たって、自然界のものがどのように形を生み出すのか、根本的な成り立ちを一度作らないと気が済まなくなってしまった。
そこで実験していくうちに、前期のテラコッタを編んでいくようなやり方で繋ぐことにした。
作業を進めていくうちに、「創発」を目指すこととなった。
単体としては取るに足らないものが集団となることで、単なる「個体の集合」を超えた別の性質を備える事ができる現象を創発と呼ぶ。
宇宙の根本的な性質として創発は存在し続けていて、
例えば、細胞とそれから構成される生体組織や、社員個人とその人たちから構成される社会組織、ハチやアリなどの社会性昆虫の巣などが挙げられる。
縫う・留めるなどの小さな手仕事は、ひとつひとつ見ると細胞のようで、
その小さな行為の連続が、最終的なフォルムを生み出せるのではないだろうか。
布の持つ特性と、縫うという小さなプロセスが、自らの形状を徐々にデザインしていく。
それによって最終的に出来上がった形である要素の集積が、別のものに見える瞬間が作りたいと考えた。
どんどんメディアが様々になっていく中で、自分は制作において、こんなにアナログなままでよいのだろうかと思っていたこともあった。
しかし、どれだけメディアが様々になろうと、どれだけ技術が進歩しようと、今のところはまだ自分と世界の界面は皮膚である。
色々な素材に触れ、縫うや留めるなどのシンプルな作業を施すことは、触覚を通して自分の居場所やいまここにいることを確認し、考える時間をつくる行為である。
それらを可視化していく制作は、人間の根源的な欲求に立ち返ることではないだろうか。